當作靖彦氏のセミナーと研究発表会開催
21世紀に入り、テクノロジー主導のグローバル化が急速に進む中、国境を越えて、人、モノ、情報、文化が広範に移動し、人、文化、ビジネス、経済の交流、統合が急速に進んできました。インターネットの発達により、これまでつながることが出来なかった人とも簡単に、そして瞬時につながることができ、この中で、言語の様相も変わり、言語の持つ役割も変化してきました。また、教育の目標、役割も変化し、日本語を含む言語教育にも変化が求められています。
21世紀のキーワードは「つながる」と言われていますが、當作(『NIPPON 3.0の処方箋』講談社 2013年)は言語を使い、人、モノ、情報と新しいつながりを作り、社会活動を行い、社会に貢献し、社会を変えていく知識、能力、資質を身に付け、人間として成長していくことを目標とした言語教育のアプローチ、ソーシャルネットワーキングアプローチ(以下SNA)を提案しています。
SNAでは学習者は地域社会や教室外の人々とつながり幅広く交流し、協働作業と自律学習、そして相互交流を通して、問題発見や課題解決をしていく活動から言語を習得し、そして異文化理解を深め、社会力を伸ばしていきます。当然のことながら実験的な試みがまだ多く、SNAによる教育法やカリキュラムデザインはまだ完成していません。各国の日本語教育を行う教師や学習者のネットワーク形成も課題として掲げられています。また、様々な経験則を集約しながら、より効果的で汎用性のある教材開発、教育実践へ結びつけていくため、SNAを用いた教材と実践、さらにはその評価と効果についての調査研究が求められています。
尚、本研究発表会は日本学術振興会科学研究費補助金による基盤(C)[ソーシャルネットワークプローチと日本語教材開発](課題番号15K02662)の助成を受けています。
2016年6月25日(土)10:00〜19:30
カリフォルニア大学サンディエゴ校教授(言語学博士)、専門は第二言語習得理論と外国語教授法。アメリカの日本語ナショナル・スタンダーズの作成に参加。
外国語ナショナル・スタンダーズ理事会日本語代表理事、コンピュータと日本語教育学会(CASTEL/J)会長、全米日本語教育学会前会長。2015年、第13回日本語教育学会賞受賞。国際文化フォーラム「外国語学習のめやす」作成プロジェクトの監修者。『NIPPON3.0 の処方箋』(講談社、2013 年)ほか、外国語教育、日本語教育などに関する著書多数。
言語教育のアプローチは時代の主流の言語理論、言語教育理論、言語習得理論などにより変化するとともに、社会の要求によっても変化します。21世紀は「つながり」の時代と言われ、人と人がつながることにより新しい考えが創出され、社会を強くし、社会を変えていく時代と言われ、「つながり」を作る媒体である言語の教育にも変化が求められています。言語教育の歴史を見ると、文法・語彙が「わかる」、そして、それを使ってコミュニケーションが「できる」へと目標が変わってきましたが、今、それに加えて、人と人とが「つながる」ことも目標に加わるとともに、その能力獲得が言語教育の究極的目標となってきました。また、その「つながる」能力を効果的に使い、社会を作り、社会を変え、社会に貢献するグローバル人材を作るために、言語能力、文化能力のみならずグローバル時代の問題点を知り、問題解決を行うために高度の思考能力、創造力、協働能力、テクノロジーを使う能力など、いわゆる社会力も言語学習で開発することが要求されるようになりました。このような言語教育のアプローチをソーシャルネットワーキングアプローチ(SNA)と呼ぶことにしました。言語教育にとっては新しい「つながる」能力、社会力を開発する一番の方法は、言語を使って実際に社会活動をし、「つながる」学習活動を行うことです。この講演では、SNAの理論的基盤を議論するとともに、具体的にどのような学習活動をするのか、また、学習をどのように評価するのかを考えます。
教室 A101 | 教室 A102 | |
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13:00-13:25 |
初級日本事情クラスにおけるビデオプレゼンテーションの導入とその効果 バンクス祥恵(文教大学) |
「他者の発見」「自己の発見」「つながりの実現」を目指して —「3X3+3」を指標にした日本語上級者のためのポスターセッションプロジェクト— Park Jisuk , Nazikian Fumiko (Columbia University) |
13:30-13:55 |
「おもいからうまれくることば」を問う -初級レベルからの言語活用学び場デザイン- 宮岡 余里子(Creative Education) |
クリティカルペダゴジーの視点から見るSNAの多元的な解釈 鈴木 貴美子 (Haverford College) |
14:00-14:25 |
初級学習者における「縦割りグループ活動」の意義 ―ソーシャルネットワーキングアプローチ(SNA)の観点からー 城 保江(西南学院大学国際センター) |
日本語学習者による社会貢献の可能性を探る —PBLL (Project Based Language Learning)の場合 根本菜穂子(Mount Holyoke College) |
14:25-14:30 | 休憩 | |
14:30-14:55 |
ICTツールズを用いた学習者のつながりの取得とネットワーク分析 白鳥成彦・清水秀子(嘉悦大学) |
SNA実践を通じて習得する日本語リテラシー 松田結貴(University of Memphis) |
15:00-15:25 |
SNAのコミュニケーション能力を越えるデザイン力育成の可能性 -わかる、できる、つながる、組み替える- 岡本 能里子(東京国際大学) |
グローバル・コンピテンスを養うSNAビジネス日本語教育 岸本俊子(Clemson University) |
15:30-15:55 |
日本語学習者によるソーシャルメディアを用いた日本語使用のケーススタディ 平山 花菜絵 (北海道大学大学院) |
グローバル市民育成を目指した日本語教育 高木敦・豊田悦子(The University of Melbourne) |
15:55-16:00 | 休憩 | |
16:00-16:25 |
アウトリーチ教育活動への参加を通じた留学生の学び -生涯学習的な視点から- 清水貴恵(桜美林大学)・岩本貴永(桜美林草の根国際理解教育支援プロジェクト) |
米国とスウェーデンの日本語学習者をつないだ実践 —アイデンティティをテーマにした取り組み 髙宮優実(アラバマ大学バーミングハム校)・ナインドルフ会田真理矢(ダーラナ大学) |
16:30-16:55 |
地域を舞台にしたプロジェクト型授業の実践 山本真理(早稲田大学日本語教育研究センター) |
中等教育実践例 –「つなげよう」から「つながった」へ スロツビー薫 (Kelly Walsh High School)・Ian Daniels・田中理紗・山田 英雄 (かえつ有明高校) |
17:00-17:25 |
ソーシャルネットワーキングアプローチと滞日難民 —社会的孤立に向き合う日本語教育 — 伴野 崇生 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科) |
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18:00-19:30 | 懇親会 嘉悦大学 |